上場企業の分析は投資判断を行う上で非常に重要です。今回は安定した業績を持つ日用品大手の小林製薬について、その事業概要、強み弱み、業績推移、株価評価の観点から詳しく解説します。小林製薬の株価が割安か割高かを知るには、PER、PBR、理論株価などの指標を参考にする必要があります。バリュー投資を実践する際の参考にしてみてください。
1. 小林製薬とは – 会社概要と主な製品
小林製薬は、日本の日用品メーカーであり、家庭向けのヘルスケア用品や衛生用品を製造販売しています。同社はニッチトップ戦略を採用しており、競合が少ない商品を提供しています。
1.1 会社概要
- 社名: 小林製薬株式会社
- 設立年: 1919年
- 本社所在地: 東京都港区
- 代表者: 代表取締役社長 山本 賢一郎
- 従業員数: 約5,000人
1.2 主な製品
小林製薬は、160以上の商品を販売しており、国内外で広く愛用されています。以下は、同社の主要な製品の一部です:
- アイボン: 目の健康をサポートする目薬。
- ブルーレット: 目の疲れや乾燥を緩和する目薬。
- 命の母: 喉の痛みや咳を和らげる咳止めシロップ。
それ以外にも、小林製薬は医薬品、オーラルケア、食品、スキンケア、方向消臭剤、衛生雑貨品、家庭雑貨品、カイロ、通販などの幅広いカテゴリーで157以上のブランドを展開しています。
1.3 グローバル展開
小林製薬は、国内だけでなく海外市場でも活動しており、特に2023年から25年にかけての中期経営計画では、海外事業の強化が重要な戦略とされています。同社は米国、中国、東南アジアなどでカイロや額用冷却シート、外用消炎鎮痛剤などを販売しており、今後の成長が期待されています。
小林製薬の安定性と成長性に注目
小林製薬は業績の安定性が高く、ディフェンシブ株として知られています。医薬品や日用品の製造販売を行っており、不況時でも需要が減退しにくいとされています。さらに、連続増配を行っていることからも株主にとって魅力的な存在となっています。
2. 小林製薬の強みと弱み
小林製薬は様々な強みを持っています。以下にその要素を紹介します。
2.1. ニッチトップ戦略とネーミングの工夫
小林製薬は競合が少ない特定の市場に焦点を当て、そのニーズに合わせたニッチな商品を提供しています。また、ユニークで分かりやすい商品名を選んでおり、顧客に商品の内容を伝える上で効果的な方法を採用しています。例えば、「アイボン」「ブルーレット」「命の母」といった商品名は広く認知されており、マーケティングの手法としても成功しています。
2.2. 業績の安定性と不況に強いビジネスモデル
小林製薬は医薬品や日用品など需要が不況の影響を受けにくい商品を扱っています。そのため、業績の安定性が高く、20期連続で配当増加を続けています。このような安定した利益を維持しており、投資家にとって長期的な投資パートナーとなっています。
2.3. 国内外での事業展開
小林製薬は日本だけでなく、海外市場でも事業を展開しています。特に中期経営計画では海外市場での事業強化に注力しており、成長の限界に備えて積極的な取り組みを行っています。国内市場の成長が限定されると予測される中で、海外市場の成長による影響や原材料価格の上昇にも対応するための戦略です。
小林製薬の弱みとしては以下の要素が挙げられます。
2.4. 国内市場の成長限定と原材料高騒動の影響
小林製薬は中期的な展望では国内市場の成長が限定されると予測されています。また、原材料高の影響もあり、海外事業の成長による国内市場の縮小や原材料価格の上昇に完全に対応することは困難と考えられています。このような要素が、小林製薬にとっての経営上の弱点となっています。
2.5. 株価の割高感
小林製薬は優れた企業として知られており、その評価により株価が常に割高な水準に推移しています。このため、バリュー株投資家にとっては魅力的なターゲットではないとされています。
以上が小林製薬の強みと弱みの主な要素です。これらを考慮しながら投資判断を行うことが重要です。
3. 業績の推移と今後の見通し
小林製薬の業績は、過去から現在に至るまで変化してきました。売上は拡大傾向にありますが、利益は横ばいもしくは緩やかな右肩下がりとなっています。国内市場が主戦場であり、近年は海外市場も伸びてきていますが、国内における利益は減少しています。
3.1 業績の推移
小林製薬の売上高は、2009年に一時的な減少が見られましたが、それ以降は拡大しています。特に2017年にはインバウンド需要の増加と広告費増により、売上が急増しました。ただし、利益成長は売上ほどではなく、緩やかに増加しています。
3.2 今後の見通し
小林製薬の今後の業績に関しては、現時点では堅調と見られています。2019年12月期第3四半期の決算では、前期比で約3.7%の営業増益が報告されています。通期計画に対する進捗率は前年同期よりも少し悪いですが、問題ないレベルとされています。
ただし、紅麹製品に関する問題が発覚しており、その影響が業績にどの程度影響するかは現時点では不明です。また、国内市場においては利益が緩やかに減少しており、これが利益成長の弱さの要因となっています。
3.3 投資判断
私の投資判断としては、小林製薬の業績は直近で堅調とみていますが、問題の原因や影響が分かった状態で株価が落ち着いた時に検討するのが良いと考えます。
また、長期投資としての成長・将来性や割安度にはいくつかの疑問が残ります。投資判断は個々の判断に委ねられますので、自己責任で行ってください。
以上が小林製薬の業績の推移と今後の見通しについての情報です。
4. 株価の評価 – PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)による割安・割高感
株価の評価には、PERやPBRといった指標が使われます。小林製薬の株価が割安か割高かを検討してみましょう。
PER(株価収益率)
PERは、株価を企業の1株当たりの純利益で割ったものです。小林製薬の最新PERは約36倍です。一般的には、PERの平均値は15倍程度です。そのため、小林製薬のPERは割高な水準と言えます。
PBR(株価純資産倍率)
PBRは、株価を企業の1株当たりの純資産で割ったものです。小林製薬の最新PBRは約4.1倍です。PBRの目安とされる1倍は、企業の解散価値です。小林製薬は大企業であり、高成長が見込めないため、PBRでみるとやや割高な印象があります。
企業価値評価手法による理論株価
これらの一面的な評価指標には限界があります。私は企業価値評価手法に基づく理論株価を重視しています。小林製薬の理論株価は3718円とされています。しかし、現在の株価は8890円であり、理論株価を約139%上回っています。このことから、小林製薬の株価は大幅に割高と言えます。
投資判断基準は個人の投資スタイルによって異なりますが、私はバリュー投資を好むため、業績好調な割安株に投資することを重視しています。小林製薬の株価は現在割高であり、バリュー投資家には魅力的ではありません。もし投資するなら、株価が一時的に急落したタイミングを狙うとよいでしょう。
銘柄選定は慎重に行うべきです。投資には自己責任が伴います。
5. 配当と株主優待の状況
小林製薬の配当と株主優待について、詳しく見てみましょう。
5.1 配当利回りの低さ
小林製薬の予想配当利回りは約0.8%です。これは日本の株式市場の平均配当利回り2%前後に比べて低い水準です。配当利回りは、株価と配当金の比率を示す指標であり、一般的には高いほど魅力的とされます。しかし、小林製薬の配当利回りは平均よりも低いため、配当重視の投資家にとっては魅力度が低いと言えます。
5.2 増加傾向にある配当金
一方で、小林製薬の配当金は長期的に増加しています。2018年度には20期連続増配が実施されました。現在の配当性向(税引後純利益の配当金として支払った割合)は約29%であり、まだ増配の余地があると言えます。増配が続いている企業は、長期投資の魅力があります。
5.3 魅力的な株主優待
小林製薬の株主優待は、100株以上保有している場合に年2回、5000円相当の自社製品詰め合わせセットをもらうことができます。100株保有の場合の株主優待利回りは約1.1%であり、配当と合わせた総合利回りは約1.9%となります。株主優待の有無を考慮することで、インカムゲイン(定期的な収入)を狙った投資としても魅力があります。
要点:
– 小林製薬の配当利回りは約0.8%で低い水準。
– ただし、小林製薬は20期連続増配を実施しており、増配の余地がある。
– 株主優待では5000円相当の自社製品詰め合わせセットをもらえる。
– 株主優待の利回りは約1.1%で、総合利回りは約1.9%となる。
以上が小林製薬の配当と株主優待の状況です。配当利回りは低いですが、増配が続いている点や株主優待の存在などを考慮すると、投資銘柄として魅力があります。ただし、投資判断は自己責任で行う必要があります。
まとめ
小林製薬は安定した業績と成長性を有する優良企業ですが、現在の株価水準は割高傾向にあると考えられます。業績の推移や指標による評価からは、投資判断が難しい状況です。しかし、長期的な視点で見れば、配当の増加傾向や魅力的な株主優待制度など、株主還元の面でも魅力があります。投資をする際は、自社の投資スタイルや判断基準に合わせて、慎重に検討する必要があるでしょう。小林製薬は投資候補の有力な銘柄の1つと言えますが、ポートフォリオの中で慎重にウェイトづけを行うのがよいでしょう。
よくある質問
小林製薬は何を製造販売しているのですか?
小林製薬は、医薬品、オーラルケア、食品、スキンケア、方向消臭剤、衛生雑貨品、家庭雑貨品、カイロなど、160以上の幅広い商品を販売しており、特にアイボン、ブルーレット、命の母といった製品が有名です。
小林製薬の業績はどのように推移してきたのですか?
小林製薬の売上高は拡大傾向にありますが、利益は横ばいもしくは緩やかな右肩下がりとなっています。近年は海外市場での事業展開も進められていますが、国内市場での収益が減少傾向にあるため、利益成長が鈍化しています。
小林製薬の株価は割安ですか?
小林製薬の PER は約36倍と割高な水準にあり、PBR も4.1倍と高めです。また、理論株価との乖離も大きいため、現在の株価は割高と判断されます。バリュー投資家にとっては魅力的な銘柄とは言えません。
小林製薬の配当と株主優待はどうなっていますか?
小林製薬の配当利回りは約0.8%と低い水準ですが、20期連続の増配が行われています。また、株主優待制度として年2回5,000円相当の自社製品詰め合わせセットが贈呈されており、総合利回りは約1.9%となっています。