近年、グローバル化が進む中で、クロスボーダー決済の需要が高まっています。新興国市場においても、オンライン決済の重要性が増しています。本ブログでは、新興国市場でのオンライン決済ソリューションを提供するdLocal社について、その概要から財務状況、経営戦略までを詳しく解説します。dLocalの成長の軌跡と今後の展望に興味がある方は、ぜひお読みください。
1. dLocalの概要
dLocal(ディーローカル)は、新興国市場でオンライン決済をスムーズに行うためにソリューションを提供している会社です。主なサービスは、グローバル企業のマーチャントが安全で効率的な方法でオンラインでの支払いと受け取りを行えるようにすることです。
1.1 会社の背景と設立
dLocalは2016年に設立されました。創業者のSebastian Kanovich氏は、ウルグアイの大学で経済学の学士号を取得し、テルアビブ大学とスタンフォード大学で経営とイノベーションについて学びました。彼は自身が経験したオンライン決済の不便さを解消するためにdLocalを設立しました。
1.2 主な事業内容
dLocalは、自社のテクノロジープラットフォームであるOne dLocalを通じて、クロスボーダーおよびローカル決済取引の決済処理サービスを提供しています。主なサービスの一部は以下の通りです:
- オンラインでの支払いの受け入れと送金処理
- グローバル企業のマーチャントに対するローカルな決済方法への対応
- 新興国市場での決済体験の改善
1.3 事業展開とパートナーシップ
dLocalは、南米、アジア、中東、アフリカなどの新興国に焦点を当てた事業展開を行っています。現在、35か国でサービスを提供しており、顧客数も330以上となっています。さらに、大手企業や新興企業とのパートナーシップも築いており、マイクロソフトやアマゾン、ディディなどと連携しています。
1.4 成長と展望
dLocalは成長を続けており、2022年の第2四半期では売上高が前年比で72%増加し、営業利益も35%増加しました。また、顧客数や利用国数も増えており、将来の成長に期待が寄せられています。
以上がdLocalの概要です。次のセクションでは、財務状況と業績について詳しく説明していきます。
2. 財務状況と業績
取扱総額と売上高の増加
2024年第1四半期において、dLocalの財務状況と業績は向上しています。取扱総額(TPV)は前年同期比約50%増の53億ドルで過去最高を記録しました。売上高も前年同期比30%増の1億8,400万ドルになりました。
EBITDAと純利益の減少
調整後EBITDAは前年同期比19%減の3,700万ドルとなり、純利益も前年同期比50%減の1,800万ドルとなりました。これにはいくつかの要因があります。
影響要因
- 売上総利益の伸びが横ばい: 最大の加盟店の一つが新たな価格設定レベルに到達し、手数料の再交渉を行ったことで売上総利益の伸びが抑制されました。
- 新規立ち上げの延期: 予定されていたいくつかの新規立ち上げが加盟店によって延期されたため、予想されたボリューム立ち上げが遅れ、売上総利益に影響を与えました。
投資増額と成長期待
このような要因から第1四半期の業績は混在した結果となりましたが、売上総利益は回復すると予測しており、将来の成長を支えるために計画的な投資増額を実施しています。
地域別の成績と成長
ブラジルとメキシコはそれぞれ89%と50%の成長を記録し、クロスボーダー事業も過去最高の24億ドルのTPVを達成しました。また、地域間取引も前年同期比80%近い成長を遂げ、特にエジプト、南アフリカ、トルコ、フィリピンでの増収が顕著です。
競争力強化のためのAI活用
dLocalはAIを活用したスマート・ルーティングによるトラフィック・ルートの最適化に取り組んでおり、高いコンバージョン率を実現して競争力を強化しています。
dLocalは引き続き財務状況の改善と持続的な成長を目指しており、将来の業績向上に期待が寄せられています。
3. 収益と利益の傾向
本セクションでは、dLocalの収益と利益の傾向について詳しく説明します。以下に概要をまとめました。
a. 収益の成長
2024年第1四半期において、dLocalの取扱総額(TPV)は前年同期比で約50%増加し、53億ドルという過去最高を達成しました。特に、Eコマース、送金、ライドヘイリング、ソフトウェアのサービスといった分野での成長が著しいことが示されています。また、この堅調な成長は複数の業種にわたって継続しています。
b. 売上総利益と調整後EBITDAの変動
売上総利益は横ばいの水準を維持しており、調整後EBITDAは前年同期比で19%減少しました。この変動は、新たな価格設定スキームの導入や加盟店との契約更新に伴う手数料の再交渉などの要因によるものです。
c. 収益の地域別成長
dLocalの収益において、特にブラジルとメキシコが顕著な成長を達成しました。ブラジルでは成長率89%、メキシコでは成長率50%を記録しています。これによってdLocalは、地域の成長戦略と市場の需要に対応し、競争優位性を築いています。
d. セグメント別の業績
クロスボーダー事業における第1四半期のTPVは過去最高の24億ドルを達成しました。さらに、地域間取引も前年同期比で80%近く成長しました。特にエジプト、南アフリカ、トルコ、フィリピンにおける増収が顕著です。これらの成果は、当社の優れたオーケストレーション・サービスや強固なコンプライアンス・レイヤーによるものであり、競争力の源泉となっています。
以上が、dLocalの収益と利益の傾向についての概要です。次は、経営戦略と取り組みについて詳しくご説明します。
4. 経営戦略と取り組み
dLocalの経営戦略は、主にクロスボーダー取引の成長と地域間取引の成長に焦点を当てています。これを実現するために、dLocalは新たなライセンスの取得や決済事業者登録を行い、エジプト、アルゼンチン、エクアドル、ドミニカ共和国、ケニアなどの市場に進出しました。これにより、グローバルな送金パートナーやマーケットプレイス加盟店のニーズに対応できるインフラの整備が可能になりました。
dLocalは自社の競争力を高めるため、AIを活用したスマート・ルーティングに注力しています。これにより、トラフィック・ルートを最適化し、高いコンバージョン率を実現しています。また、堅牢なフォールバックと冗長性、効率的なプロッド防止エンジン、クラス最高のKYCおよびコンプライアンス・レイヤーなど、グローバルな加盟店固有の機能も提供しています。
特にエジプト、ブラジル、メキシコなどの地域での業績向上に重点を置いており、競争優位性を確保しています。これらの地域での成長は、企業の戦略的な投資と努力の結果であり、将来の成長の基盤となります。
dLocalは、2024年までの計画を実現するために努力を続けています。現時点では、ガイダンスの下限に到達する可能性が高いため、長期的な収益性の高い成長が期待されています。
これらの経営戦略と取り組みを通じて、dLocalはクロスボーダー取引および地域間取引の拡大に取り組んでいます。高度なテクノロジとサービスを提供することで顧客ニーズに応え、競合他社よりも高いコンバージョン率を実現しています。dLocalは、顧客に優れた商品とサービスを提供し続けることにより、持続的な成長を実現しています。
5. 市場環境とマクロ経済要因
dLocalの業績と成長は、市場環境とマクロ経済要因の影響を受けています。以下では、特定の要因について詳しく説明します。
a. アルゼンチンの経済不安定
アルゼンチンの経済不安定は、dLocalの業績に大きな影響を与えました。為替スプレッドの問題が発生し、クロスボーダー取引の一時的な鈍化を引き起こしました。しかし、前四半期終了時には成長率が回復し、クロスボーダー事業は再び成長を示しました。
b. ナイジェリアの通貨切り下げ
ナイジェリアでは、通貨の切り下げが業績に顕著な影響を与えました。金融サービス事業の取引量は減少しましたが、地域間取引は依然として堅調な成長を達成し、総合的な業績に重要な役割を果たしました。
c. 地域別の成長
地域別の成長を見ると、ブラジルでは89%の成長、メキシコでは50%の成長が記録されました。これらの地域では、dLocalは強い競争優位性を示しています。
これらの要素を考慮すると、市場環境とマクロ経済要因はdLocalの業績に重要な影響を与えました。しかし、dLocalは今後も成長を続けるために努力し、現時点でのガイダンスの下限に到達する可能性が高いと考えています。将来的には、持続的な高い成長を目指して取り組んでいきます。
まとめ
dLocalは、新興国市場におけるクロスボーダー取引とローカル決済の改善に焦点を当てた優れたサービスを提供しています。企業の戦略的な投資と努力の結果、ブラジルやメキシコといった地域で大きな成長を遂げています。一時的な市場環境の影響はあったものの、dLocalは持続的な高い成長を目指しており、将来的にもさらなる発展が期待されます。同社のテクノロジー力とグローバルなネットワークを活用し、新興国市場でのデジタルペイメントの利便性向上に貢献し続けることが望まれます。
よくある質問
dLocalはどのような会社ですか?
dLocalは、新興国市場でオンライン決済を円滑に行うためのソリューションを提供する会社です。主なサービスは、グローバル企業のマーチャントが安全で効率的な方法でオンラインでの支払いと受け取りを行えるようにすることです。2016年に設立され、現在35か国でサービスを提供しています。
dLocalの収益と利益の傾向はどうですか?
dLocalの取扱総額(TPV)は前年同期比で約50%増加し、過去最高を記録しました。売上高も前年同期比30%増加しました。一方で、調整後EBITDAは前年同期比19%減少し、純利益も50%減少しました。これには新たな価格設定スキームの導入や加盟店との契約更新に伴う手数料の再交渉などの要因が影響しています。
dLocalの経営戦略と主な取り組みは何ですか?
dLocalの経営戦略は、クロスボーダー取引と地域間取引の成長に焦点を置いています。新たなライセンスの取得や決済事業者登録を行い、エジプト、アルゼンチン、エクアドルなどの市場に進出しています。また、AIを活用したスマート・ルーティングに注力し、高いコンバージョン率を実現しています。特に、エジプト、ブラジル、メキシコなどの地域での業績向上に重点を置いており、長期的な収益性の高い成長を目指しています。
dLocalの業績にはどのようなマクロ経済要因が影響していますか?
アルゼンチンの経済不安定や、ナイジェリアの通貨切り下げなどが、dLocalの業績に大きな影響を与えました。一方で、ブラジルとメキシコでは高い成長率を記録するなど、地域によってdLocalの業績は異なる結果を示しています。これらのマクロ経済要因を考慮しつつ、dLocalは持続的な高い成長を目指して取り組んでいます。